こんにちは、kyan(@sumibi_kyan)です♪
本日は、もみ殻燃料棒(モミガライト)について、50kg使ってみてのセキララなレビューをお伝えしていきたいと思います。
もみ殻燃料棒(モミガライト)のレビュー
来歴
2023年12月に蘭越町役場にて100本(≒100kg)を5500円で購入。
同月から2024年3月までの冬季をメインに、主に薪ストーブで48時間/6回/約52kg使用しました。
使用した燃焼器具はステンレス製薪ストーブ、焚火台(パチグリル)、切り出し七輪、黒七輪です。
もみ殻燃料棒とは?
米のもみ殻を圧縮成形して燃料化したもの
ばい煙規制により野焼き処分できなくなったもみ殻を燃料として有効活用できる、地球環境に優しい循環型エネルギーとして注目を集めています。
もっぱら業務暖房用として農家や地域施設のボイラーで使用されていますが、近年のキャンプブームを背景として小売店でも見かけるようになりました。
今回紹介するのは蘭越町が製造している品ですが、同等品は日本各地の米どころで製造されています。
特徴
外観
長さ | 40cm前後 |
太さ | 5cm前後 |
重さ | 約1キロ(長さ40cmの本品1本あたり) |
機械で生成するため体積あたり重量はほぼ均一、そのため長さから大体の重さが推測できます。
ちなみに長さに多少の誤差があるため、蘭越町では正確を期してキロ単位ではなく本数で計算していました。
匂い
保存状態だと甘く香ばしい匂い、燃焼時は野焼きのソレでした。
微かにお米っぽい臭いがすることも(?)
熾火になればほぼ無臭でした。
手で簡単に割れます
オガライト同様、「もみ殻燃料棒」同士を叩くと簡単に割れます。
というか、叩かなくても両手で持っただけでボロっと崩れました(笑)
着火性
非常に着火しにくい
そのため短く割るなり事前に小枝や薪で熾きを作るなど、使用に工夫が必要です。
一から火を熾すと発火まで10分前後、既に熾火がある状態から追加投入した状態で3~5分程度かかりました。
燃え方
淡々と燃えます
一気に燃えるのではなく、線香のように炎が移動していくイメージ。
薪と異なりパチパチと爆ぜないため、物足りなければ薪や枝を足すとよいです。
(テスト時はカラマツの小枝で補完しました)
火保ち
トータルで1時間弱ですが・・・
炎が上がるのは20分程度、加えて熾火が30~40分程度(=熾火の時間の方が長い)といったところ。
トータルの燃焼時間こそ薪やオガライトと遜色ないですが、炎を上げてる時間が短く、熾火の時間が長いです。
薪ストーブでは炎が出てたほうが暖かいため、薪と較べて投入頻度が高くなります(忙しい)。
ちなみにkyanは焚き火・薪ストーブ共に1時間に1本(≒1kg)のペースで消費しました。
燃焼灰の特徴
形状 | そのままの形で灰化し、力を加えると崩れます。 |
量 | 大変多い(15%程度) |
色 | 表面は新聞紙を燃やした跡みたいな白色で、内部は黒。混ぜるとねずみ色。 |
特徴 | ・紙薪を燃やした時のような毛羽立ちがありました。 ・比重が軽く、粒子が細かく粉のように飛散します。 |
その他 | ・もみ殻燃料棒の灰も薪の灰と同様、薪ストーブの窓ガラスの研磨剤として使用できました
・灰に発がん性物質が含まれている可能性がある 但し「では具体的に何℃以上で何分以上燃焼させると結晶化するか」という点はソース元によってバラつきがあり、公開情報を調べた範囲では明確な基準を得られませんでした。 感覚的には個人レベルで年数泊のキャンプで使う分には差し支えないと思いますが、そういう問題が提起されていることはお伝えします。 |
・灰の量について
15%程度
薪だと5%位、人工薪のオガライトでも10%位なので、比較して明らかに灰が多いです。
灰が多い=重量あたりの熱量が少ないことを意味します。
そして熱量を補うためにより多くのモミガライトを燃やす⇒灰で炉内が埋まる・・・の悪循環。
ちなみに燃焼効率が高いほど残留灰が少ないことを考慮すると、使用した薪ストーブの燃焼効率が低い可能性も排除できませんが、本品の利用用途として「家庭用薪ストーブ」や「アウトドア」での使用が含まれていることから、一般的な割合と考えて差し支えないでしょう。
・灰量の計測事例
事例1)2023年12月アルテンキャンプ | 灰分17.23% (本品22859gを燃焼して、出た灰は3940g) |
事例2)2024年2月アルテンキャンプ | 灰分15.93% (本品10712gを燃焼して、出た灰は1706g) |
<注意事項> 着火時の焚き付け(松ぼっくり、割り箸、小枝)や熾火作る用に投入した薪の分も入ってること、一方でペール缶に移す際にこぼれたり風で飛んでロストした分もあるので、誤差があることに留意ください。 |
温度
炎が上がってる状態⇒200~350℃
熾火⇒150~250℃(薪ストーブの外側から複数回計測)
/最高511.1℃(七輪へ移して直接計測)
最高温度は薪の代用品としては遜色なく、木炭の代用品としては黒炭(マングローブ炭など)とよい勝負でした。
但しもみ殻燃料棒は炎を上げてる間こそ暖かいのですが、薪の熾と異なりエネルギーがあまり残っていないのか、熾火になると周囲が急に冷えていきました。
熾火の状態で七輪へ移し替えて食材を焼いてみたものの火力がイマイチで、保温用途には使えますが新しく調理をはじめるにはやや物足りませんでした。
歩留まり
ある1袋(約20kg)のうち、崩れてもみ殻に還った分が408gありました。
割った際や持ち運ぶ際にボロボロと崩れやすく崩れた分は、もはや燃料として使いにくいのが難点。
この崩れカスをただ捨てるのは勿体ないので、焚き付けとして使ってみました。
よいところ・気になるところ
よいところ
単価が安い
購入時単価が1本(約1kg)あたり55円(2024年6月時点、20本購入時価格)と、現地渡し価格とはいえ、コ●トコもびっくりの圧倒的な安さです。
品名 | キロ単価 | 備考 |
もみ殻燃料棒(モミガライト) | 55.0円 | 20本(≒20kg)店頭引渡時価格 |
オガライト(JAKにて購入) | 101.2円 | 15kgで税込1518円(2023年11月時点) |
薪(アルテンにて購入) | 118.8円 | 税込950円で約8kg(2024年3月時点) |
野焼きが法規制されて厄介者と化したもみ殻の有効活用法として、「ゴミとして有料で処分するよりは・・」という値付けでしょうか。
物価高騰のご時世、安さは大きな魅力です。
長期保管可能
製造元は10年保管可能とうたっています(保管状況によって、より長い期間でも問題ないと思われます)。
天然薪と異なり乾燥させる必要もないため、扱いが楽なのは有り難いです。
地産地消になって地球環境に優しい
外国産の木炭やオガライトと較べてエネルギーマイレージの小さい地元資源を有効活用できる点は、多くの方に受け入れられやすいと思います。
気になるところ
灰がそのままの形で残る
薪ストーブを使う上で「灰の残骸が邪魔して翌朝、寒いのにスムーズに追い焚きできない」のは致命的に使い勝手が悪いです。
ここが改善されないと家庭用薪ストーブ用途は難しいと感じました。
灰分が多い
前述の通り15%前後の灰がでる(研究機関のデータによると20%前後)ため、灰の始末回数が増えます。
直火ならともかく、薪ストーブやコンロで使うには頻繁な灰の始末が面倒臭いです。
水に弱い
濡れると簡単に崩れてしまうところはオガライト同様で、保管に注意が必要です。
販路が限られる
今のところ一部の小売店で取り扱ってるのみで、基本的には製造業者から直接購入するしかありません。
しかし送料(またはガソリン代)を考えると「単価が安い」というメリットが相殺される(もしくは競合燃料よりかえって高くつく)ため、一般にはハードルが高いと言えます。
燃焼時に発がん性物質(結晶化シリカ)が生成される可能性がある
こちらの記事によりますと、もみ殻を高温で燃焼させた場合に成分中のシリカが結晶化して発がん性物質(結晶化シリカ)が生成される可能性があります。
この点につき製造元に問い合わせたところ「製造機器メーカーに確認したところ、ボイラーなど密閉した炉といった燃焼温度の高い場合に生成される」との回答で、本品を燃焼させた場合に結晶化シリカが生成されるかどうか直接の回答はありませんでした。
(文面からは、燃焼後の灰分を検査する等はやっていないようでした)
但し燃焼温度で言えば熾火を計測したら相応の温度になっていた(500℃以上)ので、「本当に大丈夫?」とはちょっと思いました。
他の燃料と比較してみた
主だった点を表にしました。
コスト | 爆ぜ | 灰量 | 水濡れ | 長期保管 | その他 | |
もみ殻燃料棒 (モミガライト) |
安い | 爆ぜない | 多い (15%) |
弱い | 可能 (10年) |
・素手で簡単に割れる |
市販薪 | 高い | 爆ぜる | 少ない (5%) |
やや弱い | 不可能 (3年程度) |
・割る際に道具が必要 ・シロアリ等の虫が潜んでる可能性 |
オガライト | 少し安い | 爆ぜない | やや多い (10%) |
弱い | 可能 | ・素手で簡単に割れる |
市販薪に対する人工薪の大きなメリットはコストで、付随して「割るの簡単、長期保管、虫がいない」といった点が挙げられます。
言い替えますと薪を安価かつ大量に入手可能な方にとっては、人工薪を使う実用性はさほどありません。
個人的には、人工薪は爆ぜないので焚き火しても面白くないなあ…と思ってます。
あくまで「暖を取るための燃料」ですね。
いろいろな利用シーンで使ってみた
薪ストーブで使用
【結論】ぶっちゃけ不向き
コスト面その他の有利さを全て無に帰する致命的な欠点は、翌朝に追い焚きできず寒いこと。
多量の灰がそのままの形で残るため頻繁な除去が必要で、冷える朝を温かく過ごしたいのに、本品を使うと燃焼室に灰がそのままの形で残るため、除去しないと継ぎ足しできません。当然、熾は冷えていて継ぎ足し着火は難しいです。
一方、天然薪やオガライトであれば熾が残っているため起床後、容易に継ぎ足し着火できます。
寒い朝、起きてすぐ「灰を掻き出して一から着火・・・」なんて非現実的で、薪ストーブでの利用はオススメしません。
焚き火で使用
【結論】「あれば使ってもいい」レベル
・着火に一定量の熾火が必要
・爆ぜにくいためレジャー目的だと風情に欠けること
後者は薪と混ぜて使う手もありますが、レジャー程度の消費量なら最初から薪を買った方がシンプルです。
(敢えて本品をチョイスする必要性を感じません)
七輪で使用
【結論】木炭の代用品としてはオススメしません
・熾火の燃焼時間が短く(1時間以内)、火力も弱いため調理に使いづらいこと
・灰が多いため掻き出しが頻繁に必要となること
食材調理における使い勝手は、木炭の圧勝です。
「薪ストーブで燃焼させて熱量を取り出した後、七輪に移して暖房や食材の保温用途に使う」のように、木炭の代用品としてではなく薪ストーブの副産物として活用するならストレス少ないかもしれません。
感想
本品を購入前に「もみ殻燃料棒(モミガライト)」とはどんなものかを調べましたが、業務用ボイラーでの使用例は豊富な一方、キャンプや薪ストーブで使用した方の情報はほとんどありませんでした。
形状や素材から薪やオガライトの代用品と考えられがちですが(kyanはそう期待して買いました)、使い勝手や注意点が異なる別物と考えた方がよいです。
コストが安いのは大きな魅力ですが、単純な代用品として使うとフラストレーションがたまること請け合い。
灰量が多いこともさることながら、灰がそのままの形で残るのが致命的に不便。そこが解決されないと、どれほど安価でも薪ストーブ用途で使うことはないと思います。
レビューにあたり薪ストーブ以外でも試しましたが、「別にもみ殻燃料棒でなくともいいかな」という印象。
バーベキューなら最初から木炭を使った方が炎の出る時間は短い&火保ちもよいし、焚き火なら最初から薪を使った方がすんなり着火できて爆ぜも楽しめます。
低コストは魅力的ですが、趣味の活動で他の何かを犠牲にしてまで選択するメリットを感じません。
ちなみに本品に適した使い方は、業務用として燃焼灰を適切に排出する機構を備えた専用ボイラーで強制燃焼させて熱エネルギーを取り出すことにあり、個人用途やアウトドア向きの燃料ではないと感じました。
一部メディアでは「エコだ」とか「優秀な燃料だ」ともてはやされていますが、ご自身の使い方に適っているかどうか、メリット/デメリットを理解した上で選択しましょう。
当記事がその一助になりましたら幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
【結論】オガライトとは似て非なる物。デメリットを理解した上での利用がオススメ。
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